猫天与編中編:憎呪編 プロローグ

猫天与編中編:憎呪編 プロローグ


別に自分や彼女がこの世界で一番不運だと思った事はない。


伝書桜の過去も、夏油様の騒動も、絵文字の所業も、彼女の死も


これらは全て'悲劇'でありこの世界によくある事だ


不幸も幸運も、この世界では善悪関係無く降りかかる


どんなに圧倒的な強さを持ってようと死ぬ時は死ぬ。


どれほど弱かろうと生きる時は生きる


善人が生き悪人が制裁を受ける事も


悪人が栄え善人が死ぬ事も


この世には平等に巻き起こる












・・・あぁ



だがそれでも









この怒りは止まらない


この憎悪が尽きる事はない












・・・だって














気に食わないだろう?












※※※












「・・・・・・」

慣れた手つきでページを捲る。

そしてそのページには・・・


俺と伝書桜の血の繋がりを決定づける物、更に俺に双子の弟がいた事が記されていた。


だが一番の問題はその弟はあの時確信した彼女を殺した可能性が高い人物だった事だ

・・・案の定か、あの時伝書桜に言われた時に感じた悪い予感は間違いでは無かったらしい。

つまり俺はあの殺人鬼の血を引いているらしい


・・・あぁ


虫唾が走る



だがそのお陰でアイツへの憎悪を更に高める事ができる




この事実に感謝しつつ俺は更に思考を働かせる


だがまぁ、重要なのは他にも白山家の生き残りがいる可能性がある事か。

あの時目撃情報があったとされる人物は銀髪赤目の少年・・・これは他にも白山家が生き残ってさえいれば大体が当てはまってしまう。


まぁ困ったらとりあえず両方同時に殺す事にしよう。



そう考えていると背後から声が聞こえる


・・・狐と下僕か


いつもの通り資料を渡しつつ適当に誤魔化しておく


はぁ・・・油断しすぎたな


・・・'あれ'からいかんせん調子が悪い




なるべく'あれ'について思考したく無く態々単独行動をしたというのにまさかつけられている事に気づかないとはな・・・

















・・・ツキの死


彼女の姿を勝手に使っておいて勝手に死んだ女


あれを気にかける事なんて俺には無かっただろう。







・・・あぁ、それなのに







あのの死が頭から離れない










彼女の呪いがずっと俺を蝕んでいる。





・・・あぁ、本当に最悪な気分だ。

彼女は姿を借りただけの別人なのに。



そもそも俺はいつから伝書桜を気にかけるようになった?


伝書桜は血を引いていたとはいえ彼女とは別人だ


それなのに俺は未だに彼女を気にかけてしまっている


盗賊に彼女の幸せは託したはずだったのに


それどこか俺は本来殺人鬼以外には抱く事はないであろう怒りを絵文字に向けてしまった




・・・あぁそうだ、そもそもだ


伝書桜だけじゃ無い、アイツらもだ


ただの同業者でしか無いのに


過ごしてきた時間は俺にアイツらへの'好感'という感情を抱かせた。


・・・はぁ、

俺の脳は全てアイツへの呪いで染めて置きたいんだが。


一体どうすればこれらの感情を捨てる事が出来るのだろうか



いっその事アイツらも全員殺してしまうか?




・・・いや、現実的じゃ無いな

仮にそんな事をしても呪詛師認定されてアイツを見つける前に殺されるのがオチだ。

きっと俺も疲れているんだろう。


さて・・・ここで見つかる情報はこんな物だろう。


後はとっとと伝書桜達と合流しようと思った時


















俺の視界は別の光景に変わった


「・・・は?」


一体何がどうなって・・・!?











『・・・あぁ、願ったな!!その願いを!!』






・・・敵か

そう思った俺は即座に臨戦体制を取ろうとする

だか俺の意思に反して体は動かなくなる


「・・・・・・!?」


これは・・・術式か!?


そう思ったその時、俺の目の前に男が現れる。






・・・銀髪赤目の男


白山家だ







そうして俺の前に現れた男は口を開き始める



「私の術式は正確にはその相手の願いを叶え'させる'事を代償に魂を破壊する事・・・だ

がまぁ対象にできるのは小動物だけだがね」




・・・という事はこいつがツキの言っていた呪詛師か

目の前の男はそのまま独り言を言っているかのように続けて話している。



「この小動物に君が含まれているかは賭けだったが・・・どうやら上手く行ったようで何よりだよ、君はあの仲間達に微塵も関心が無かったらな。」



そうか・・・あの時一瞬でも脳内に過ぎってしまったから・・・!

それにこの言い方・・・あの場所に最初から居た・・・!?


「それにしてもあまぁ・・・クク、予想通り、あの女を姿をした物に死なれるのは相当効いたようだな」


こいつ・・・!?

俺への嫌がらせで差し向けたのか!?



だがそれにしてもこいつは何者だ・・・?

見た目の年齢からして俺の弟では無いだろう


「テメェは・・・一体・・・!」


「・・・あぁそうか、そうか!!!やはり思い出しすらしないか!!あぁ・・・それが貴様の罪だ!!」


「知らねぇよ・・・テメェみたいな奴・・・」


「そうか・・・ならばこれ以上の会話は不要」


そう男が呟くと自身の体に激痛が走る


「・・・あぁ、そうだ、折角だし最期に言っておこう・・・貴様達を狙う理由は・・・兄の仇、あの青目の少女の排除、そして・・・獣の特級呪霊への復讐だ」


その言葉を聞いて俺の意識は堕ちた

Report Page